2011年11月30日水曜日

スマートシティ

最近、特に震災後は、国内外でこの「スマートシティ」という言葉を耳にします(スマートシティについての詳細は以下の日経新聞の記事を参照)。現在は実証段階ですが、都市の再開発・新構築を行う壮大なプロジェクトで、主だったものだけでも次世代送電網(スマートグリッド)、スマートメーター、再生可能エネルギー、蓄電池、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド)をはじめとしたスマートモビリティ、など多様な技術を駆使する必要があることから、日本企業がオールジャパン体制で国内外で活躍する機会を提供しうるものです。

しかし、個々の企業も販売導入したい製品やサービスが異なり、短期長期の売り上げ・利益回収の見込みも異なることから足並みを揃えるのが大変です。このため、スマートシティを実際に進めるためには、総合的な企画提案・調整からシステム導入後の保守点検・運転管理まで、あらゆる能力が求められることになります。例えば、あるスマートシティ案件に発足当初から食い込んでいたある日本企業も、そういった総合力を十分に発揮できなかったがために、競合他社の追従を許してしまったケースもあるようです。

詰まるところ、実証段階を通じてビジネスモデルとして成立するという成功例を積み上げることが大事で、そういう実績を糧に、国際競争の世界で勝利することが低炭素社会の輸出にも資すると思いました。

(参考:日経新聞)

スマートシティが「業界」の壁を崩す日

2010/6/1 9:00
写真1 2010年5月に日本経済団体連合会(経団連)が視察団を送り込んだ、中国唐山市にある「曹妃甸エコシティ」

写真1 2010年5月に日本経済団体連合会(経団連)が視察団を送り込んだ、中国唐山市にある「曹妃甸エコシティ」

写真2 曹妃甸エコシティは「新都市型」の典型例といえる。2020年には人口80万人の大都市にしようという構想だが、現在はまだ一人も住んでいない

写真2 曹妃甸エコシティは「新都市型」の典型例といえる。2020年には人口80万人の大都市にしようという構想だが、現在はまだ一人も住んでいない

 このスマートシティとは一体何なのか。実は明確な定義がなく、立場によってとらえ方が違うというのが本当のところだ。あえて言えば「最新技術を駆使してエネルギー効率を高め、省資源化を徹底した環境配慮型の街づくり」となろう。そこではエネルギー関連はもちろん、水、交通、廃棄物など、あらゆる産業が絡み、多くの最新技術が使われる。

 その市場規模も巨大だ。スマートシティの中核技術の一つであるスマートグリッド(次世代送電網)について、日米欧で進められているプロジェクトの投資額を合計しただけでも、2030年までの累計で100兆円を大きく超える(野村証券の予測)。スマートシティ全体となると、都市インフラ整備への投資額が2030年までに世界で41兆米ドル(1米ドル91円の換算で約3730兆円)という途方もない数字になる(ブーズ・アンド・カンパニーの調査)。

 ここまで大きいと、さすがにとらえどころがない。そこで、スマートシティをいくつかの視点で分類してみよう。

壮大な実験が始まった

 最も分かりやすいのは「新都市型」と「再開発型」に分類する方法である。新都市型は、それまで都市がなかった場所に文字通り最新鋭の都市を造るもので、新興国に多い。代表例は、前述したマスダール・シティのプロジェクトである。

 マスダール・シティでは、すべての電力を太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギーで賄う。石油などは使わない。2006年に「マスダール・イニシアチブ」という組織が立ち上がり、建設費だけで220億米ドルを投じる。マスダールには1500社が入居し、居住者は4万人になる計画である。このように新都市型は、交通や電力、水といったあらゆるインフラに最先端技術を盛り込めるため、エネルギー効率を一気に高めやすく、それだけ環境負荷も小さくなる。ただし、事業費は数兆円と大きくなる場合が多い。

 一方の再開発型は、先進国に多い。アムステルダムのプロジェクトが、その代表例といえよう。既にあるインフラを利用するが、そこにセンサーや制御機器を追加してエネルギー効率を高める。新都市型ほど劇的な効果は望めないが、街の景観はあまり変えずに済むし、事業費は数億円から数百億円に収められることが多い。我が国で「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として2010年4月8日に経済産業省が発表した横浜市、豊田市、京都府、北九州市における取り組みも、この再開発型に分類できる。

 この分類法とは視点を変えて、「離島型」や「広域型」といった分類をすることも可能である。

 離島型の代表例は欧州のマルタ島や韓国の済州島などである。離島は、電力網をはじめとするインフラが独立性の高い状態で存在していることが多い。このため、大陸側の大規模なインフラなどに影響を与えない形で各種の実証実験を展開できる。事業費は数億円から数十億円の場合が多い。こうした性質を生かし、例えば済州島のプロジェクトでは韓国企業の最先端技術を集め、世界進出に向けたショーケースを作ろうとしている。

 これに対して、複数の都市にまたがってエネルギー効率を高めることを目指し、事業費が数十兆円と大規模になることもあるのが広域型である。中でも有名なのは「デザーテック」だろう。サハラ砂漠に降り注ぐ太陽熱を電力に変換し、地中海ケーブルで欧州の各都市に送り込む。総事業費は4000億ユーロ(1ユーロ110円の換算で44兆円)の壮大なプロジェクトである。

100都市のスマートシティ化に動き出す中国

 今、日本企業が熱いまなざしを送っているのが中国のスマートシティである。市場規模が大きいことに加え、事業参入の可能性が欧州や米国に比べて高く見えること、地理的に近いことなどが理由である。冒頭で述べた天津郊外の「中新天津生態城(中国・シンガポール天津エコシティ)」が先行しており、2012年までに基本インフラを整え、2020年までに人口35万人の都市を造る計画だ。総投資額は2500億元(1元15円の換算で3兆7500億円)。上記の分類では新都市型に当たる。

 実はこの天津エコシティ、中国で13あるエコシティ・プロジェクトの一つに過ぎない。このほか、新都市型で3つ(唐山曹妃甸、北川、トルファン)、再開発型で9つ(蜜雲、延慶、徳州、保定、淮南、安吉、長沙、深セン、東莞)のプロジェクトが進んでいる。最近、この中で一躍注目を集めたのが「曹妃甸エコシティ」である(写真1)。2010年5月に日本経済団体連合会(経団連)が視察団を送り込んだこのプロジェクトは、2020年に人口80万人という大都市をつくり出そうという構想である。

 中国には大都市が600近くあるが、このうち100都市を「エコシティ化」する計画だ。つまり、今回の13のエコシティ・プロジェクトはモデルケースであり、技術や政策を実証するのが目的である。その後、これを100都市に展開する。国内の産業界が今、中国のエコシティ・プロジェクトに注目するのは、最初の「13」に食い込むことで、その後の「87」での事業も手に入るのではともくろんでいるからである。

 スマートシティは今後、あらゆる産業界に影響を及ぼしていく。前述の電力網や交通、水のほかにも、スマートハウス、スマートビル、グリーン・ファクトリー、電気自動車、ゴミ処理など多岐にわたる。これを産業別で見ると、電機、自動車、機械、IT(情報技術)、建設、素材、金融など、関係のない産業が見つからないほどだ。そして、それぞれの産業が新たなビジネスチャンスを持っている。例えば電機業界はスマートメーター、スマートグリッド家電、IT業界は超高速通信ネットワーク、クラウドコンピューティング、建築業界は省エネ照明・空調、新型断熱材、自動車業界は電気自動車や充電設備など、挙げていけばきりがない。

 「もう『業界』という考え方は限界を迎えている」。スマートシティにかかわろうとする企業の中には、このような考え方を持つ経営者が出てきている。例えばスマートグリッドはIT業界とエネルギー業界の交わったところに位置し、スマートハウスになるとこれに建築業界が加わってくる。既存産業の枠組みでスマートシティの事業をとらえていては、事業獲得に乗り遅れるかもしれない。

(日経BPクリーンテック研究所長 望月洋介)

2011年11月29日火曜日

【書評】アホな総理、スゴい総理―戦後宰相31人の通信簿 (小林 吉弥)

本書は下の写真のとおり、「鳩山アホやな」ということを書きたくて出したと勘ぐりたくなります。政治部の記者の如く、歴代総理の発言や党内派閥政治の模様を見るにつけて、評価しています。具体的に何点、何位かは書いてませんが、吉田、岸、池田、佐藤、田中、中曽根、小泉は評価が高そうです。

問題は、歴代総理の通信簿をつけるのに、何を実現したかという政策の観点か大きく欠如していることで、人間像や党内政治の人身掌握術を照らすばかりです。政治は人間模様だ、という一側面にワイドショーのようにスポットを当てるこのマスメディアのやり方を改めない限り、なかなか「政策本位の政治」への期待が高まらないのでは、と先日の大阪W選挙の結果を見ても思いました。ジャーナリスト・記者の姿勢と能力が問われる時代です。

【書評】官僚の責任 (古賀 茂明 )

本書を一読した感想は、その辺の暴露本と変わらないと思います。古賀氏自身または周辺で起きた官僚の堕落した姿を紹介し弾劾しているのですが、全体を客観的に俯瞰するというより、あくまで個人の目線で事象を捉えている感が、芸能人や時々ある官僚や企業人の暴露本を想起させました。

また、辞める前の経済産業省時代に書かれたというので時期的に仕様がないかもしれませんが、暗に改革に取り組んできて自分が善で、抵抗した官僚集団は悪という二項対立を演出したいようにも見えました。その割に、改革の中身があまりクローズアップされていなかったので、もしそのような引き立たせ方をしたいならば、しっかりと改革派官僚が何を思い、実行しようとし、そして何故抵抗されて頓挫したのかを述べられた方が良かった気がします。辞めてすぐに刊行された本書ですが、上記の印象で、かえって元改革派官僚としての格を下げてしまった感があります。がんばれ、古賀氏!
官僚の責任 (PHP新書)

2011年11月28日月曜日

【書評】地産地消のエネルギー革命(黒岩 祐治)

本書は、原発事故後の今後のエネルギー転換を見通す内容で、よく整理された構成と簡潔な説明で再生可能エネルギーの「創エネ」、スマートグリッドなどの「省エネ」、蓄電池やEVなどの「蓄エネ」の内容を理解する入門書として最適です。各種のデータや情報を集めているので、コンパクトなデータ集や事例集として手元に置いておくのもよいかもしれません。

個人的には冒頭部分の知事就任までのストーリーはあまり斬新さを感じませんでした。その意味でも創エネ・省エネ・蓄エネの解説をしている後半が有用だと思います。また、全体として歯切れの良い内容ですが、最後の送電分離論などは電力会社(東電)や産業界に配慮した姿が行間に垣間見えます。

地産地消のエネルギー革命 (PHP新書)

2011年11月27日日曜日

【書評】民主の敵(野田佳彦)

このは、実家に帰る電車の読み物として買ってみましたが、数時間で読めます。野田現総理の唯一の出版物という触れ込みでしたが、もしそうならば、改めて一冊ちゃんと本を書いて頂いてもよさそうです。

主張のポイントは、「2009年時点で自民党は金属疲労を起こしているから、とりあえず政権交代してみましょう、任せてください」というもので、この国をこうしたい、ああしたいという明確なビジョンや確固とした政治信念を感じ取ることはできませんでした。

辻説法を毎朝続けていました、喋るのが上手になりましたというエピソードがありましたが、政治家になってみたいという若い人に向けてのメッセージとしては良い気がしますが、大多数の国民は、回数よりも訴えてきた中身、すなわち、具体的な政策提案の内容や目指すべき将来の姿を示すリーダーシップを望まれることでしょう。(しっかり)頑張れ、野田総理!
民主の敵―政権交代に大義あり (新潮新書)

【書評】風の盆恋歌

社会人なりたてに読んだ本ですが、こんな儚い大人の恋もあるのかなあ、と若い自分には強く印象に残った作品です。これを読んで、八尾のおわら風の盆に行きたいと思う人は多いことでしょう。私はその時期(9月頭)仕事が忙しく、まだ一度も行けていません(涙)。想いがあれば、例えどんなに月日が流れても関係ない、ということなのでしょうね。哀愁の美学漂う名作だと改めて感じ入りました。
風の盆恋歌 (新潮文庫)

子どもの名前

生まれてくる子供は女の子かもしれません♪

私達は、日本人にも外国人にも発音・覚えやすいユニバーサルな名前がいいなぁ♪ と今から名前を考えています。
(留学時代、雄祐(Yusuke)の名前を、ユースキー、ユスクー、と色々言われ、何度も発音してみせないといけなかったので…)

まず、女の子はいっぱいあって選り取りミドリです♪

沙羅(Sarah)、ハナ(Hanna)、理紗(Lisa)、なおみ(Naomi)、エリ(Elly) などなど

一方、男の子は、中々ユニバーサルな名前が見当たりません(そして若干古い感じも・・・)。

譲二(George), 健(Ken),レオ(Leo) など

ということで、男の子が生まれた時には、そんなことは無視して、龍馬(Ryoma) にしようと思っている今日この頃です。

環境省税制改正要望の結果(1次査定)

11月25日の政府税制調査会において、環境省の平成24年度税制改正要望についての1次査定の結果が示されました。(○=認める、×=認められない、P=ペンディング。判断を留保)

【国税】

・揮発油税の当分の間の税率相当額の環境税化
 (揮発油税の当分の間の税率を維持) ⇒ ○
 (税収を地球温暖化対策に優先的に充当) ⇒ P
・放射性物質による汚染への対処を促進するための特例措置 ⇒ ○
・最終処分場に係る維持管理積立金制度に係る特例措置の適用期限の延長 ⇒ ○
・認定長期優良住宅に係る税制上の特例措置の延長 ⇒ ○
・PCB汚染物等無害化処理用設備、石綿含有廃棄物等無害化処理用設備に係る特別償却の延長 ⇒ ×
・廃棄物処理業用設備に係る法定耐用年数の短縮 ⇒ ×
・試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除(上乗せ措置の恒久化) ⇒ ×

【地方税】

・廃棄物処理施設に係る課税標準の特例措置の延長 ⇒ ○
・公害防止用設備に対する課税標準の特例 ⇒ ○
・再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置の創設 ⇒ ×
・環境教育・環境保全活動拠点に係る税制上の特例措置の創設 ⇒ ×

加えて、車体課税の見直しなどの以下の要望事項については、政治的な議論を要すること等から、引き続き調整が必要となっています。

・車体課税の一層のグリーン化等 ⇒ P
・廃棄物処理事業の用に供する軽油に係る軽油引取税の課税免除の特例措置の延長 ⇒ P


現在の仕事(税制総括)

現在、私は環境省の環境経済課というところで税制総括の仕事をしています。

私の現在のミッションは大きく二つです:

1.環境省が行う税制改正要望を一つでも多く実現すること

このため、環境省の各担当課が行う税制改正要望の審査、取りまとめ、税務当局との折衝などを行っています。

2.そのうち、特に長年の懸案となっている地球温暖化対策税(環境税・炭素税)を導入すること

こちらは環境経済課が自ら税制改正要望の提案、調整などを行っていますので、その陣頭指揮を取っています。

ちなみに、政府の税制改正要望のプロセスは、毎年、夏ごろ(例年8月末)に各省庁から税務当局(財務省・総務省)に次年度の税制改正要望がなされ、内容を調整のうえ、師走に税制改正大綱という形で政府(及び与党)として内容を確定させることになります。

(その後、年明けの通常国会に、大綱に基づく税制改正法案を提出し、通常は3月までに国会での議決を経て税制改正が行われます)

以上から、政府部内の議論の山場は12月、その後の与野党も含めた国会での議論の山場は3月ということになります。

近況報告 (2011年秋)

今年ももう10月に入り秋の湿った空気が心地よい今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。私も7月23日にイギリスから東京に戻ってきて早2ヶ月が経過しました。

その間、久しぶりの日本の生活、気候(蒸し暑さ)そして仕事の勘を取り戻すのに時間がかかりました。敬語など普段使わない日本語も以前はたどたどしかったですが、最近元に戻ってきました。

1.イギリス留学中から執筆しておりました学術論文もついに完成しました。内容は、国際的な炭素価格政策に関するもので、今の仕事にも大いに関係しています。http://ukeco.exblog.jp/16943378/

2.現在は、環境省の環境経済課という部署で地球温暖化対策税などの税制を担当しています。ちょうど先週末に要望を出してひと段落したところで、これから年末の決定に向けて頑張ります。

3.また、新居に移りました。最寄駅が新宿駅です。

4.最後に、来年第一子が誕生予定です。明けの1月を予定しています。可愛い子が生まれてくるのを今から心待ちにしています♪

以上、近況報告まで。

Catch up (October 2011)

As October started, the wind is feeling much better in Tokyo. This also means that two months have passed since I came back from UK on 23rd July. Here come what I have been doing lately.

1. Firstly, I am glad to tell you that my dissertation has been just finished. This is about global carbon pricing and thanks to many participants in the online survey.

This topic is deeply related to my current position at the Ministry of the Environment. You can find the abstract and the link for downloading the full documents at http://ukeco.exblog.jp/15701050/.

2. Secondly, I have currently been in charge of the environmental taxation like a carbon tax. In Japan, each ministry proposes a tax reform plan in the end of summer when was the last weekend this year, and the government will decide a taxation plan in the end of year. Thus, for the next three months, I will do my best to achieve the greener taxation than ever.

3. Thirdly, I have just moved to new accommodation located in the central Tokyo called Shinjuku. It smells a bit retro-flavor ;p

4. Finally, I am extremely happy to tell you that we will have a baby next year! S/he will be born next January. Looking forward to having a new family.

Kindest regards,