2013年7月9日火曜日

【書評】日本の宿命(佐伯啓思)

【評価:】(興味関心があれば読むことをおススメ)

本書は、日本の近代主義の価値観(自由・平等、民主主義、経済発展、人権・平和などによる「幸福追求」)を絶対視し、疑うことをやめたことが、今日の我が国の閉塞感の原因と論ずるエッセー。
日本の近代化は大きな矛盾を孕んでおり、戦後そのことに目を背けて続けてきたとする。
同調するかどうかは別として、考える視点を与えてくれる。

<ポイント>

・一時期の橋下維新に見られる「人気主義デモクラシー」は「民意」を背負った独裁者(僭主政)を生み出す可能性。
・総理の品格は国民の品格(専門家でもない人気者でもない「人格者」を選べない国民)
・無脊椎の国ニッポン(信念なく信ずべき価値を持たず、自分の「利」を追い求める国民)
・日本は本当の独立国ではない(米軍の駐留と引換えに行われた主権回復=占領政策⇛安全保障体制)
・戦後の日本の「主体」はアメリカ的なものに遠隔操作された主体(文明の側に立って野蛮な日本の歴史観や道徳観を顧みない主体)
・開国の強迫観念(開国は先進的。世界に乗り遅れる、とはアメリカに見捨てられる、の意)
・近代日本の悲劇:日本の近代化=西洋列強の力から逃れて自立を保つために、西洋並みのち力を手にする西洋模倣の近代化⇨西洋列強と力の対決を強いられる(「開国」から「大東亜戦争」はひとつながり)
・日本近代化の極北=「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう」(三島由紀夫)。しかし今や「経済的大国」というわけでもない。
・戦後日本の頂点(1980年代)になり、「戦後の精神」のうちに燻っていた「疚(やま)しさ」の感覚(無条件の近代化や反映への躊躇。戦争の犠牲者達に犯罪者のレッテルを貼り、彼らが敵としたアメリカに乗り換えた)が急速に薄らいだ⇛世界で第一の経済大国になったという奢り⇛日本はアメリカへの「自発的従属」
・「独立の気風」=「痩せ我慢」が現代のような「第三の開国」の時代においては重要(「利」や「便」ではなく「義」「士風」「武士の精神」)

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