2013年8月18日日曜日

【書評】予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」(ダン・アリエリー)

【評価:】 (手に取ってみること絶対おススメ)

本書は行動経済学の研究成果を扱うもので、経済学が想定する「人間は合理的な選択をする」ことは現実的ではなく、私達の行動は外部の力出で影響を及ぼされ、その結果、反復的に不合理な選択が行われることを、数々の検証・研究結果から、明らかにするもの。日常の疑問から設定する仮説とその当否を明らかにする実験方法のいずれも、どうしてそんなアイデアが浮かぶのか、とインスピレーションを与えられるものが多く含まれている。

<ポイント>
●私達は、あらゆるものを絶対的ではなく、相対的に比較して選択しており、それゆえ「おとり選択肢」に惑わされ、また、周りより少しでも給料が低ければ嫉妬する。
●物の値段・価格は自動的に決まるものではなく、最初に認識した価格(時として外から刷り込まれた恣意的な価格)に大きく引きずられる(アンカリング)。また、最初の決断に、その後の決断も影響を受ける。
●私達は、なにかが「無料!」だと少しばかり興奮しすぎて、結果としてその誘惑に負けて、最善の利益を選択できない傾向にある。
●社会規範(仕事の誇り、ボランティア精神、家族・親戚付き合い、愛など)は時として市場規範(お金の関係)より強力・効果的に私達の行動に影響を与える。また、この二つを両立したり途中で転換することはできない。
●値段を持ち出さないことが社会的規範をもたらし、社会的規範により他人のことをもっと気にかけるようになる。排出量取引のように環境汚染に値段をつけることは、倫理や環境は取るに足らないとされる恐れがある。社会的規範を弱体化させるおそれのある市場的規範を安易に導入すべきではない。
●性的な興奮状態は判断を変える。性的・道徳的な判断が通常と著しく異なり、より性的に不用心、無防備、また不道徳になる。
●先延ばしとの戦いに勝利するためには、公に宣言するなど「自制」が鍵になる。
●所有意識・保有効果は、私達が持っている物に対して①惚れこみ、②失うことをおそれ、③他人も同じ思いと勘違いすることで、その値段・価値を過大評価させる。
●人は常に選択できる状態にあることを望み(退路を絶たれるのを嫌がり)、それが価値のない選択肢であろうと惑わされ(ex.バーゲンセールの不要な特売品)、また価値のある扉が消えかかっているのに、気づかないことがある(ex.子供と一緒に過ごさずに仕事に精を出す)
●予測や思い込みは、感覚を変える(雰囲気が高級なら味も高級に感じる)。また、能力・出来栄えも変える(ステレオタイプ化されたレッテルを貼られるとそのとおりの反応を示すex. 女性は数学が苦手)。この効果・影響を取り除きたい時は、先入観や予備知識を排除し、あえて目隠しの状態に置くこと。
●プラセボ効果(実際はないのにあると信じることで得られる効果)は値段が高い物の方が高い効果。
●信用は実体感のある重要な公共財で、一度失う(不信)と回復に時間がかかることから、大切に守り気づかうべきもの。
●我達はそもそも不正直になりやすく(不正を起こしがちであり)、特にお金を直接扱わない場合(職場の備品を持ち帰る、など)には、都合のよい正当化の理由が見つかりやすい故に、起こりやすい。このため、自戒や宣誓で、正直な気持ちや職業倫理を呼び起こすことが大事。

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