本書は、ケンブリッジ大学の経済学者である著者が、自由市場主義経済の通説に疑問を呈し、より良い経済システムのあり方を提示するもの。その具体化の方法や妥当性の検証は別として、よく言われる主張に対して立ち止まって考えるきっかけを与えてくれる意味でオススメの一冊。
<ポイント>
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- 自由市場なんて存在しない
- 市場の境界は客観的な科学で決まるのではなく、政治的に決まる
- 市場における生産者、生産方法、販売方法についての規制は、むしろ強まっている(汚染・CO2排出量の制限など)
- 規制を廃止すべきという主張=「金のある者にその領域でより大きな力を与えるべき」「その規制法によって守られる権利を認めない」
- 規制は、人間の知的能力の限界から、活動の複雑さを制限し、より良い決定を下せるために必要なもの
- 政府は市場参加者よりも市場をよく知る必要はない
- 企業の自由を制限するのが経済にも企業にも良い場合がある
- 企業活動を利する規制(希少資源の保護や生産性を長期的に高める職業訓練の義務付け)がある→重要なのは規制の量ではなく、その目的な内容
- 政府は企業・産業を勝利に導ける
- 日本では「審議会」を通じてビジネスリーダーと情報交換
- 今なお計画経済の世界に生きている
- 政府による研究開発、インフラ整備への投資、指示的計画(投資、整備、輸出などの目標を設定し、民間セクターと協力して達成しようとする計画)、部門別の産業政策、国営企業の計画的運営など
- 大きな政府こそ経済を活性化できる
- うまく設計された社会保障制度→労働者に第二のチャンスを与える→人々に変化に対して前向きに→速いスピードの経済発展を可能にする
- 経済を成功させるのに優秀なエコノミストなど必要ない
- 日本の経済官僚は法学部出身
- 経済を失敗させてきた自由主義経済学ではなく、”ほか”の経済学(「市場の失敗」や「厚生経済学」。ピグー、アマルティア・セン、スティグリッツらによって発展)が必要
- 脱工業化時代は幻想でしかない
- 製造部門の生産性が急激に上がったためサービス部門の雇用割合が増えており、生産システムの製造業部門の重要性は落ちていない
- サービスでは輸出収入が減少→国際収支問題に直面し生活水準の低下&先進技術を買う力の減少→経済成長のスピードが落ちる
- インフレを極端に抑え込もうとしてきた結果、むしろ投資を減少させて成長を減速させてきた
- インフレは低レベルから中レベル程度までは危険はものではない
- 金融市場の効率はむしろ悪くしないといけない
- 金融デリバティブなどの効率のよい金融イノベーションは、金融資産の流動性を高いものに→所有者はあまりにも速く変化に反応→企業の長期的発展に必要な「辛抱強い資本」を確保するのが困難に→金融取引税のような効率を意図的に悪くする規制が必要
- 株主の利益を最優先する企業は発展しない
- 株主は最も身軽な利害関係者→特に小株主は、短期的利益による配当を最大にする戦略を好む→長期的投資、再投資に回せる利益剰余金を減らすことで、会社の長期的な成長力を弱める
- 国際的な賃金格差が生じる最大の理由は、生産性の違いではなく、移民抑制政策のため。
- ここ30年間アフリカが停滞している真の原因=強制的に導入させられた自由市場政策
- 企業の国籍=なお研究開発・戦略決定などの最重要活動をどこで行うか決める鍵
- 買収にあっては国籍に加えて、買い手企業の特定事業の実績&買収する会社への長期的なコミットメントの強さ等を考慮すべき
- トリクルダウン理論は成立しない(富は貧者にまでしたたり落ちない)
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