2016年8月30日火曜日

【書評】地政学で読む世界覇権2030(ピーター・ゼイハン著。2016年)

本書は、地政学の考えに照らし、2030年までに、いったんは米国中心主義が薄れる。しかしその後、ロシア、欧州、中国は次々に自滅し、米国は世界で圧倒的な超大国になる”との分析を行っている。その中で日本は、衰退する一方でアメリカを除く他国と比べれば幾許か望みがあると述べられており、世界の中での日本を頭の体操として考える上で、一つの示唆を与える可能性がある。具体的には、以下のとおり。
  •   既に高齢化が進行しているとはいえ、ベビーブーム世代が最も多額の税金を支払うようになっており、資本蓄積という面ではまだ良い。
  •   国の借金が唯一ほぼ完全に国内にとどまっている。
  •  世界で最も先進的な産業基盤と最も高い技術を持つ労働力を持つ。
  •   世界で二番目に強力な海軍がある。エネルギーと貿易の安全(シーレーン)確保を図る意味で非常に大きな意味を持つ。
  •   98%以上が日本民族であり単一の文化アイデンティティを持つ。これは政策実行面や忍耐の体力を備えているという面で重要。生活水準が下がることに耐えられることを既に示した。
  •   移民の流入もなく、単純労働は高齢者によって担われつつあり、年金財政の圧力緩和に寄与する。
  •   天然資源はほとんど無く、国内市場も取るに足らないので、海軍によりアジアから資源・市場をなどを奪っていったという膨張政策の歴史を有する。
  •   日本人は他の多くの国民以上に、重要な決断を次々に下す必要に迫られるだろう。しかし、暗い見通しばかりではない。…確かに国内に残る産業は海外から輸入された原材料に完全に依存しているが、これも当初考えるほど大きな問題にはならないだろう。輸出産業の大半が海外移転した結果、国内に残る企業が国内総生産に占める割合はわずか15%とかなり低くなっている。そして日本のゴミの分別回収システムは世界で最も効率的なものの一つであり、一般家庭ごみ及び産業廃棄物の半分以上がリサイクルされているので、原材料の需要はさらに抑制されている→国際市場―原材料でさえ―へのアクセスを以前と同レベルに保つ必要は、実はないのだ。今後10年間で生産量は半減するだろうが、それまでに日本は海外の新たな供給元を見つけるか、あるいは自国の消費量を減らす時間的余裕があるだろう。


  ➔ 日本んの将来は非常に憂えるが、他のほぼすべての国を憂える程ではない。
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