【評価:】(興味関心があれば読むことをおススメ)
本書は、米国大学院の経営学者である筆者が、世界レベルのビジネス研究の最前線をわかりやすく紹介し、ビジネス界の重大な「問い」は、どこまで解明されているのかエッセー形式で綴ったもの。面白いトピックのイイとこ取り感はありますが、経営学に興味を持たせるための入門書として十分楽しめます。
・有名な競争戦略論(マイケル・ポーターのSCPパラダイム)は、持続的な競争優位を確保するため、優れたポジショニングをとる(①競合度が低く、新規参入が難しく、価格競争が起きにくい産業を選ぶ、②競合他社と異なる商品・サービスを提供する)差別化戦略により、ライバルとの競争を避ける守りの戦略
・近年ではグローバリゼーション等による過当競争により、競争優位は持続的でなくなってきており、攻めの戦略(新製品投入、モデルチェンジ、価格引下げ、販促活動など)が有効になる可能性
「組織学習」
・組織は過去の経験から学習する(Learning Curveが存在する)ことが分かっており、そのスピードは組織や産業で違い(米国の場合、学習効果の高い産業はコンピューター産業、医薬品業、石油精製業などで、低い産業は製紙業、製糸業など)
・誰が何を知っているかを知っておくトランザクティブ・メモリーを活用することが組織の記憶力を高めパフォーマンスを向上させる上で重要かも(メンバーそれぞれの専門性の深さと各人の知識を正しく把握する正確性がパフォーマンスに影響)
「イノベーション」
・知と知の組み合わせから新しい知を生み出すことであり、企業は知の幅をほどほどに広げる必要
・一方で、企業は(特に事業が成功している企業ほど)、知の探索(新しい知を求める)よりも知の深化(既存の知識の改良)に傾斜しがち(コンピテンシー・トラップ)
・このため、企業は組織として知の探索と知の深化のバランスを保ち、コンピテンシー・トラップを避ける戦略・体制・ルール作り(すなわち「両利きの経営」)が重要
「ソーシャル・ネットワーク」
・人と人との親密で深い関係、『強い』結びつきが人や組織の活動の成果(便益)を高める
・一方で、むしろ『弱い』結びつきで広くネットワークを形成した方が情報伝達が効率的となり、多様で有用な情報を得られる
・人と人を繋ぐ立場・機会に恵まれた人や組織の方が年収や出世など経済的に得をする
「グローバル経営」
・やや集団的な国民性を持つ人達からなる日本企業は、実はそれゆえ(集団の外との協力関係を築くのが心理的に困難なため)に海外企業との協力関係を築くのがうまくない可能性
「国際起業」
・起業(アントレプレナーシップ)活動は、本質的に一定の地域に集積する傾向(例:起業家と投資家が集まっているシリコンバレー)
・一方で、起業の国際化が注目され、起業後直ちに国際展開をする企業が台頭したり、ベンチャー投資家が海外事業の立ち上げに投資するようになっている
・国際化の背景には超国家コミュニティ(海外での教育等をベースに、国と国の間を頻繁に行き来し、国境をまたいで活動する起業家、投資家、グローバル企業人、エンジニア、研究者がインフォーマルなコミュニティを形成)の発展があり、人に根付いた知識やインフォーマルな情報が国を超えて循環するようになっている。そのようなコミュニティにアクセスできる方が国際展開に機会に恵まれる
「リアル・オプション」
①事業計画を立てる前に、事業に関係する全ての不確実性を洗い出す
②そのうち事業に重要な外生的な不確実性を選別し、それぞれの楽観ケースと悲観ケースを想定する。その上で、各ケースでどのような戦略オプションが考えられるか検討
③段階的に投資を行う事業計画を立て、悲観ケースと楽観ケースのそれぞれで事業の収益性を評価
④事業がスタートしたら段階段階で、不確実性が低下又は高まっていることを確認(仮定は仮定に過ぎず、既定路線としてはならない)。その上で、次の戦略オプションを選択するか検討・実施
「M&A」
・買収額は経営者の心を写す鏡であり、①経営者の思い上がり、②自社をどうしても成長させたいという焦り、又は③国家を代表しているというプライドが、経営者に高い買収プレミアムを支払わせている
「コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)」
・事業会社がベンチャー投資を行うCVCは、企業同士が連携してイノベーションを実現する「オープン・イノベーション」戦略の一手段となりうる
・CVC投資が多い事業会社の方が企業価値が高くなる。これは投資を通じてベンチャーの持つ技術や新規事業の将来性を学ぶことが可能なため。逆にベンチャー側は事業会社から固有の施設、顧客ネットワーク、ロジスティックスといった経営資源の提供を受けられるというメリットがある。
・CVC投資はリスクも大きい。成功のために、事業会社は長期的に業界内での信用を築き上げることが重要
「資源ベース理論 (Resource Based View)」
①ある企業の経営資源に価値があり、それが希少な時、その企業は競争優位を獲得する
②その経営資源が他社には模倣不可能で、またそれを代替するものがないとき、その企業は持続的な競争優位を獲得する
本書は、米国大学院の経営学者である筆者が、世界レベルのビジネス研究の最前線をわかりやすく紹介し、ビジネス界の重大な「問い」は、どこまで解明されているのかエッセー形式で綴ったもの。面白いトピックのイイとこ取り感はありますが、経営学に興味を持たせるための入門書として十分楽しめます。
【ポイント】
「競争戦略」・有名な競争戦略論(マイケル・ポーターのSCPパラダイム)は、持続的な競争優位を確保するため、優れたポジショニングをとる(①競合度が低く、新規参入が難しく、価格競争が起きにくい産業を選ぶ、②競合他社と異なる商品・サービスを提供する)差別化戦略により、ライバルとの競争を避ける守りの戦略
・近年ではグローバリゼーション等による過当競争により、競争優位は持続的でなくなってきており、攻めの戦略(新製品投入、モデルチェンジ、価格引下げ、販促活動など)が有効になる可能性
「組織学習」
・組織は過去の経験から学習する(Learning Curveが存在する)ことが分かっており、そのスピードは組織や産業で違い(米国の場合、学習効果の高い産業はコンピューター産業、医薬品業、石油精製業などで、低い産業は製紙業、製糸業など)
・誰が何を知っているかを知っておくトランザクティブ・メモリーを活用することが組織の記憶力を高めパフォーマンスを向上させる上で重要かも(メンバーそれぞれの専門性の深さと各人の知識を正しく把握する正確性がパフォーマンスに影響)
「イノベーション」
・知と知の組み合わせから新しい知を生み出すことであり、企業は知の幅をほどほどに広げる必要
・一方で、企業は(特に事業が成功している企業ほど)、知の探索(新しい知を求める)よりも知の深化(既存の知識の改良)に傾斜しがち(コンピテンシー・トラップ)
・このため、企業は組織として知の探索と知の深化のバランスを保ち、コンピテンシー・トラップを避ける戦略・体制・ルール作り(すなわち「両利きの経営」)が重要
「ソーシャル・ネットワーク」
・人と人との親密で深い関係、『強い』結びつきが人や組織の活動の成果(便益)を高める
・一方で、むしろ『弱い』結びつきで広くネットワークを形成した方が情報伝達が効率的となり、多様で有用な情報を得られる
・人と人を繋ぐ立場・機会に恵まれた人や組織の方が年収や出世など経済的に得をする
「グローバル経営」
・やや集団的な国民性を持つ人達からなる日本企業は、実はそれゆえ(集団の外との協力関係を築くのが心理的に困難なため)に海外企業との協力関係を築くのがうまくない可能性
「国際起業」
・起業(アントレプレナーシップ)活動は、本質的に一定の地域に集積する傾向(例:起業家と投資家が集まっているシリコンバレー)
・一方で、起業の国際化が注目され、起業後直ちに国際展開をする企業が台頭したり、ベンチャー投資家が海外事業の立ち上げに投資するようになっている
・国際化の背景には超国家コミュニティ(海外での教育等をベースに、国と国の間を頻繁に行き来し、国境をまたいで活動する起業家、投資家、グローバル企業人、エンジニア、研究者がインフォーマルなコミュニティを形成)の発展があり、人に根付いた知識やインフォーマルな情報が国を超えて循環するようになっている。そのようなコミュニティにアクセスできる方が国際展開に機会に恵まれる
「リアル・オプション」
①事業計画を立てる前に、事業に関係する全ての不確実性を洗い出す
②そのうち事業に重要な外生的な不確実性を選別し、それぞれの楽観ケースと悲観ケースを想定する。その上で、各ケースでどのような戦略オプションが考えられるか検討
③段階的に投資を行う事業計画を立て、悲観ケースと楽観ケースのそれぞれで事業の収益性を評価
④事業がスタートしたら段階段階で、不確実性が低下又は高まっていることを確認(仮定は仮定に過ぎず、既定路線としてはならない)。その上で、次の戦略オプションを選択するか検討・実施
「M&A」
・買収額は経営者の心を写す鏡であり、①経営者の思い上がり、②自社をどうしても成長させたいという焦り、又は③国家を代表しているというプライドが、経営者に高い買収プレミアムを支払わせている
「コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)」
・事業会社がベンチャー投資を行うCVCは、企業同士が連携してイノベーションを実現する「オープン・イノベーション」戦略の一手段となりうる
・CVC投資が多い事業会社の方が企業価値が高くなる。これは投資を通じてベンチャーの持つ技術や新規事業の将来性を学ぶことが可能なため。逆にベンチャー側は事業会社から固有の施設、顧客ネットワーク、ロジスティックスといった経営資源の提供を受けられるというメリットがある。
・CVC投資はリスクも大きい。成功のために、事業会社は長期的に業界内での信用を築き上げることが重要
「資源ベース理論 (Resource Based View)」
①ある企業の経営資源に価値があり、それが希少な時、その企業は競争優位を獲得する
②その経営資源が他社には模倣不可能で、またそれを代替するものがないとき、その企業は持続的な競争優位を獲得する
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