2012年1月7日土曜日

【書評】新・堕落論―我欲と天罰 (石原 慎太郎)

本書は、震災後、石原現東京都知事が東日本大震災を日本国民への「天罰」と称したように、現代の堕落した日本を憂う内容となっています。すなわち、

・以下は、日本人という民族の本質的な堕落としか言えないものである。
-あてがわれた「平和の毒」に冒され、あてがい扶持の憲法による徒な権利の主張と国防を含めた責任の放棄、そして教育の歪みが、国民の自我(物欲、金銭欲、性欲)を野放図に育て、人間相互の絆を壊した。
-恥を嫌い、清廉を好み、自己犠牲による献身という日本人の美徳は消滅した。
-アメリカに現在まで間接統治された日本は、アメリカの「妾」であり、日本は日本自身の重要な決定を自らの判断で決めてこなかった。これは、国家の堕落であり、国家官僚と政治家の責任である。(その結果、横田基地は今に至るまで広い排他的飛行区域と共に戦勝記念品として存在しており、日本の先端技術も収奪されている)

・「核の傘」というのは幻であり、自衛のための核を保有する意思を持つべきである。さもなければ尖閣のような領土問題で日本は軍事的圧力に屈しざるを得ない。
・ゆとり教育は間違いで、「父母に孝に」「兄弟に友に夫婦相和し」「朋友相信じ」「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」といった基本道徳も含めた生きるための規範を「刷り込み教育」で覚えこませるべき。
・高福祉低負担は幻想であり、現在の国家財政を見れば、増税だと何でも拒否する甘えた国民体質を正し、それにへつらう政治を変革し、消費税増税などの税制改革を断行すべき。
・日本の経済再生施策として、多大に買い込んだアメリカ国債を担保に基金を作り、5%以上の利回りがあり得るプロジェクトに投資すべき(例:天然資源豊富なシベリアの開発)・
・若者の無気力、弱劣化を克服すべく、高校卒業と同時に1年間軍役などの公的な義務に就かせるべき。

・インターネット等の膨大な情報の氾濫に溺れることで、画一的な発想、行動しか出来ず、自分が納得する人生を歩むことが出来にくくなっている。本気の恋愛をすることも少なくなった(根源的情念なき恋愛)。ただただ欲望を増加させ、ヴァーチャル的な暴力や死に感覚を麻痺させる。

⇒このような堕落からの脱却のためには、まずは行えばすぐにやってのけること(核保有に関する可能性を誇示するためのシミュレーション、若者を正すための労役の義務化、財政再建のための税制抜本改革など)で国民を啓発し、いたずらな我欲の抑制に繋げる。それが、震災復興と超克のための基本的な地盤作りに必要である。

【感想】:その意見に賛同するかどうかは別として、命を賭してもやりたいこと、やるべきことが中々見つからない今日において、世界、日本、そして日本人というものがどのような立ち位置に置かれているのか、その認識の下で何をどうすべきなのか、考え、公で大いに議論したらよいと思います。NHKの「坂の上の雲」や映画「山本五十六」を年始に見ましたが、そこで描かれているのは、戦争に一喜一憂する国民の姿でした。マスコミが戦争を煽る姿も別にありましたが、大事なことは国家の出来事、存亡に一人ひとりが思いを馳せるという姿勢であろうと思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿