2012年9月23日日曜日

【書評】現代語訳 論語(齋藤孝)

本書は、孔子の論語(の現代語訳)を紹介したものです。説話は全体を通してかなり重複しますが、印象に残ったものを項目別に並べて見ますと、

○学問
・『朋(とも)あり、遠方より来る、また楽しからずや』 (友人が遠くから自分を思い出して訪ねてきてくれる。実に楽しいではないか)
・自分を分かってもらえないと嘆くより、人を理解していないことを気にかけなさい
・15歳で学問に志し、30にして独り立ちした。40になって迷わなくなり、50にして天命を知った。60になり人の言葉を素直に聞けるようになり、70になって思ったことを自由にやっても道を外すことはなくなった。
・『故(ふる)きを温(たず)ねて、新しきを知る』 (古き良きことをわきまえ、新しいものの良さもわかる)
・『憤せずんば、啓せず』 (分かりたいのに分からず身悶えしているようでなければ、指導はしない)
・『丘や幸いなり、いやしくも過ちあれば、人必ずこれを知る』 (もし自らに過ちがあれば、誰かがきっと気付いて教えてくれる。幸せなことだ

・『過ちて改めざる、これを過ちと謂う』 (過ちをしても改めない、これを本当の過ちという)
・『止むは吾(わ)が止むなり。進は吾が往くなり』 (人が成長する道筋は、山を作るようなものだ。あともう一かごの土を運べば完成しそうなのに止めてしまうとすれば、それは自分が止めたのだ。それはまた土地をならすようなものだ。一かごの土を地にまいてならしたとすれば、たった一かごと言えど、それは自分が一歩進んだということだ)
・その地位、役職にいるのでなければ、その仕事に口出ししないことだ(分限を守るのが大切だ)
・『後生畏るべし』 (自分の後に生まれた者に(今の自分に及ぶかもしれないと)畏れるのは当然だ。ただし、45歳にもなって人の評判が立たなければ、もはや畏れる必要はない)
・40歳になって人から憎まれるようでは、おしまいだ
・『辞は達するのみ』 (文章は意味が伝わるのが何より大切だ)
・内から出た真心である「忠」と、嘘をつかない「信」を生き方の中心とし、自分より劣った者を友人にしないようにすることだ
・『道に志し、徳に拠り、仁に依り、藝(げい)に遊ぶ』 (正しい道に向かって進み、身につけた徳を拠りどころとし、私欲のない仁の心に沿い、礼・楽・射・御・書・教のような教養を楽しみ幅を広げる、学問を修めるとはこういうことだ)

○徳
・『徳は弧ならず。必ず隣(となり)あり』 (いろいろな徳は、ばらばらに孤立してはいない。必ず隣り合わせで、一つを身につければ隣の徳もついてくる。)
・過不足なく極端に走らない「中庸」の徳は最上のものである
・私は美人を好むように徳を好む人を見たことがない

○仁
・『巧言令色、鮮(すくな)し仁』 (口ばかりで外見を飾る者は、ほとんど仁がないものだ)
・仁とは私心のない知者である。仁とは心全体の徳である
・仁の人は難しいことを先にやり、自分の利益を後回しにする
・仁の人は他人の心づかいがあるので、自分が身を立てようと思うときは、同時に人も立て、自分が事を成し遂げようと思うと、同時に人が事を成し遂げるようにもする。他人のことでも自分の身にひきくらべて察する
・『知者は水を楽(この)み、仁者は山を楽(この)む』(知の人は快活に人生を楽しみ、仁の人は心安らかに長寿となる)
・『知者は惑わず、仁者は憂(うれ)えず、勇者は懼(おそ)れず』
・『仁に当たりては師にも譲らず』(仁を行うに当たっては先生にも遠慮は要らない)
・5つのことを世に行うことができれば、仁といえる。すなわち、①「恭」(つつしみ深い⇒人から侮られない)、②「寛」(人に寛容で心が広い⇒人心を得る)、③「信」(言行が一致して誠がある⇒人から信頼され仕事を任される)、④「敏」(機敏に実行する⇒功績が上がる)、⑤「恵」(他人に財を分かち与える⇒うまく人を使うことができる)

○君子
・『人知らずして恨みず、また君子ならずや』 (世の中の人が自分のことを分かってくれず評価してくれなくても怒ったりうらんだりしない。それでこそ君子ではないか)
・『君子固(もと)より窮す。小人窮すればここに濫(みだ)る』 (君子ももちろん困窮することはあるが乱れない。小人は困窮すると心が乱れて、でたらめなことをする)
・義を根本とし、礼法にしたがって行い、謙遜して発言し、誠実さをもってしあげる、これでこそ君子である

・君子には9つの思うところがある。すなわち、①「明」(はっきり見る)、②「聡」(もれなく聞く)、③「温」(顔つきは穏やか)、④「恭」(姿・態度はうやうやしく控えめ)、⑤「忠」(言葉は誠実で)、⑥「敬」(仕事には慎重)、⑦「問」(疑わしいことは問いかける)、⑧「難」(怒るときにはその後の面倒を思う)、⑨「義」(利得を目前にしたときは公正な道義を思う)

・君子は、人と言とを混同しない(発言が良いからと言ってその人物を抜擢せず、また人物が優れなかったりしても、その発言を無視したりはしない)
・一流の人物「士」とは、国家が危急のときは命を投げ出して事に当たり、利益を目の前にしたときは道義に反しないか考え、祖先などの祭祀に当たってはつつしみ深くし敬いの気持ちで臨み、喪には哀しみの心情をこめる
・自らの「命」(天命)が分からないようであれば君子とはいえない。「礼」(社会の規範)が分からないようであれば世の中で自ら立つことはできない。「言」(人の言葉の真意)が分からないようであれば、人を理解することはできない


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