【評価:】(興味関心があれば読むことをおススメ)
本書は、リフレ派の経済学者である筆者による、学術的視点からのアベノミクス肯定論とその課題をまとめたもの。
本書は、リフレ派の経済学者である筆者による、学術的視点からのアベノミクス肯定論とその課題をまとめたもの。
【マクロ経済学の短期・長期の比較】
期間
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定義
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理論
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焦点
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政策
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短期
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不完全雇用
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有効需要の理論
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需要側
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金融・財政政策
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長期
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完全雇用
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経済成長論
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供給側
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成長政策
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【経済政策の3つの目標】
① 経済成長:余力を上げる
※オークンの法則:経済成長が高い方が、失業率が低い
※イースタリンの逆説:一定の所得水準を超えると幸福度とGDPには相関関係がない
※失業者の方が幸福度が低い
⇒政策トレンド:規制緩和、民営化、競争開放政策(規制、国営、産業政策路線は概ねうまくいかない)
② 景気安定化:不況からできる限り速やかに脱出すること、行き過ぎた好況を是正すること
⇒政策トレンド:財政政策から金融政策へ
※マンデル=フレミング効果:資本移動の自由&変動相場制の世界では、金融政策は有効だが財政政策は無効
③ 所得再分配:貧困の解消(最低限の所得保障)と格差の是正
⇒政策トレンド:各国によって異なるが、教育の重視は共通
【アベノミクス】
① 第一の矢:大胆な金融緩和+2%のインフレ目標(デフレ脱却のリフレーション政策)
・ 過去10年の実質GDP成長率は、他の先進国に見劣りするが、人口一人当たりではほぼ同程度、生産年齢人口一人当たりの実質GDP成長率は、日本が最も高い
・ 貨幣数量理論:貨幣の総供給量↑⇒貨幣の価値↓&財・サービスの価値↑。現在の物価水準は現在の名目貨幣供給量のみならず、将来の貨幣供給プロセスにも左右される。
・ 流動性の罠(クルーグマン):デフレ⇒名目金利ゼロ⇒実質利子率(資本コスト)<自然利子率(資本の期待収益率)⇒マネーへの超過需要⇒金融緩和は景気に対して効果なく、インフレ目標が有用。その補助手段として財政政策(具体的には投資減税)が有用。
・ フィリップス曲線:縦軸に物価上昇率、横軸に失業率⇒日本はきれいな右肩下がり(⇘)。これに対して生産性が低下した結果、賃金が低下し失業率が上昇したとする考えも。
・ リフレ政策の批判に対して
1)長期金利が上がる
※ フィッシャー方程式:名目金利=実質金利+予想物価上昇率⇒予想インフレ率が上昇すれば、実質金利は低下する
2)賃金が上がらない
※ 物価と賃金には正の相関関係があるが、因果関係は判別しがたい
3)資金需要がないので投資は増えない
※ 開業率と景気循環に連動。また、実質金利が低下すれば、インセンティブになる。
4)通貨安競争(通貨戦争)が起きる
※ 為替介入ではなく、金融緩和による通貨戦争は好ましい(量的緩和⇒デフレ解消⇒資産価格↑⇒景気回復が早まる)。1930年代の大恐慌の解決策の一つは、競争的な通貨の切り下げであった( アイケングリーン)
②第二の矢:機動的な財政運営(13兆1千億円の緊急経済対策)
※ 財政政策の目的:①資源配分機能:公共財の供給、②所得再分配機能、③景気安定機能
※ 財政再建は支出削減7割、増税3割ならば成功し、好況になる
※ クルーグマン、サマーズ:ケインズ効果は大きい。名目金利ゼロに近づいた時、裁量的財政政策のもつ乗数効果は大きくなる
※ 日本の場合、公共事業の乗数効果は90年代以降低下しており、1に近づいている。環境等への投資・減税は景気浮揚効果を高める可能性(飯田泰之)
※ 財政再建に必要なのは、①名目GDPを増やす、②社会保障関係予算を制御すること
※ 政治的には「上げ潮派」(デフレ脱却を重視)、「増税による財政再建派」(現状を長期均衡とみなす)
※ 長期の税収弾性値は1.1(経済成長率1%↑⇒税収1.1%↑)
※ ドーマー条件(国債発行が国債残高比率を発散させない条件):長期国債名目利子率<名目GDPの成長率 ⇒ 名目成長率4%以上の場合、ドーマー条件の成立可能性が高い
③第三の矢:成長戦略
※ ルーカス:経済成長は「奇跡」
※ 経済学の知見:
(1) 経済成長にイノベーションは不可欠。ただしイノベーションは難しい
※ 成長会計:労働投入の成長率への寄与度は小さくなっているが、全要素生産性(イノベーション)が成長に大きな役割
※ イノベーションは、予測不可能、不確実性、偶然の要素に左右され、試行錯誤によってしか生み出されない
(2) 産業政策(ターゲットポリシー)の効果は疑わしい
※ かつてですら日本経済の発展に産業政策は寄与しなかった(三輪・ラムザイヤー)
※ むしろ、従来の日本型政策モデルが最もよく当てはまるのは日本の失敗産業である(竹内弘高)
※ 中小企業保護は効果なし。ベンチャー・キャピタルは考えられるが、必ずしも政府金融で支援する必要はない。
(3) 望ましい政策は、「人事を尽くして天命を待つこと」
※ 成長政策の4+5要素:①(知的)所有権の保護、②金融の発展、③教育のある労働力、④マクロ経済の安定性、(先進国の場合さらに)⑤市場競争と参入、⑥高等教育、⑦株式市場を通じた資金調達、⑧民主主義、⑨分権化された企業組織
※ オーツの分権化定理:便益が費用を上回るかどうかの選択をその地方に住む人に委ねるならば公共財の配分はより効率的になりえる(分権化の利点)
※ TPPの要点は、市場の拡大と市場のインフラ作り(加盟国の関税の原則撤廃、各国共通の広範なルール作り)
【アベノミクスの課題】
1) 所得再分配への配慮
①生活保護:個々人の生活水準を基準とした「個人再分配」と子供の貧困対策
②教育政策:就学時前(3~5歳)児童教育の無償化、3歳までの保育所の充実
2) 第一の矢:インフレ目標で十分か-名目GDP成長率目標の設定を
3) 第二の矢:消費増税と国土強靭化-公共事業の政策効果と現在のインフラを維持することの吟味を
4) 第三の矢:政策イノベーションを導入できるか-内外の規制を比較する国際先端テストを
5) 政治リスク:4つの思想グループの「同床異夢」-①リフレ派、②財政拡張派、③産業政策派、④増税財政再建派
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