本書は「地政学」を用いて21世紀の100年間の大まかな動きを予測するというもので、当たるかどうかは別にしてグローバルかつ歴史的な観点から世の中を見つめなおす機会を与えてくれる良書だと思います。この中で著者は以下のことを予測しています。
○ 対テロ戦争の泥沼化、金融危機に端を発する景気後退、新興国の追い上げにもかかわらず、21世紀を通じてアメリカの世界覇権の優位性は揺るがない。
○ その根拠として、大西洋・太平洋いずれの大洋にも面した北米大陸に身を置く事、強力な海軍力を背景とした世界の7つの海を制していることを挙げている。
○ 21世紀前半には地理的・人口的・政治的な制約から、ロシア・中国・インドといった大国の力が衰える。
○ 加えて人口爆発の終焉とロボットテクノロジーの進展、宇宙分野におけるイノベーション(宇宙衛星からの地上監視と攻撃、宇宙太陽光発電)からアメリカの一極支配体制が益々強固なものとなる。
○ このアメリカに対抗しうる力をもつ地域覇権国は、日本・トルコ・ポーランドである。
○ その中で日本は政治の不安定さを官僚体制により補い発展を続けるが、人口減少に伴う労働力の確保、経済成長の閉塞状態の打破、そしてエネルギー資源の確保を目指し、経済活動・軍事活動を活発化させ、結果として弱体化した中国・ロシアの沿岸地域に覇権を築き上げる。
○ ユーラシアの覇者を目指す立場になった日本・トルコの連合国により、アメリカへの軍事的な挑戦(極超音速機とミサイルによるピンポイント爆撃)が2050年代に起きるが、アメリカ産業界のイノベーションと不屈の増産体制により連合国側が敗戦し、日本は大陸の利権を失い撤退することになる。
○ これによりアメリカの宇宙空間の支配は決定的なものとなり、当分の間繁栄を謳歌する。
○ 21世紀最後のアメリカへの挑戦者は2080年代のメキシコになるかもしれない。ただし、アメリカの優位性は揺るがないだろう。
日本が自衛をやめて軍事活動を活発化させるのは容易に想像ができませんが、大恐慌後に長く経済不振に喘ぎ、エネルギー輸入が制限される中で資源を求めるために中国に進出した日中戦争や真珠湾攻撃を皮切りにした太平洋戦争の歴史を振り返れば、今度絶対にないとは言い切れない気もします。そのためには、国内で安定的な経済成長や持続可能な財政・社会保障、そして環境社会を構築し、将来に希望が持てるようにしないといけないのでしょうね。
また、著者は地球温暖化はアメリカが開発し実用化するであろう宇宙太陽光発電により解決を見るとしていますが、果たしてそれでどこまで地球上の電気エネルギー需要を満たすことができるのかは慎重な検討が必要だとも思いました。
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