2011年12月17日土曜日

【書評】節電社会のつくり方 スマートパワーが日本を救う!(加藤 敏春)

本書は(社)スマートプロジェクト設立の元通産省役人の著者が、自らの団体と一緒にエネルギーのスマート化を進めることで節電社会を作っていきましょう、と呼びかけている本です。全体的に役人的なコンセプトペーパーのきらいは否めませんが、関連情報を提供してくれると言う意味はあるかもしれません。例えば、

○ 日本のエネルギー源の64%は捨てられている。これは山奥につくった発電所からの長い距離による送電ロスと発電プロセスでの電力変換効率が半分以下で後は熱として逃げているため。これは他国でも同様で米国で62%、イギリスで63%、フランス72%、そして中国は78%といずれも高い数字。

○ 分散型エネルギーとはこのような一極集中型発電のロスを減らすために、地域地域で創エネをすることでエネルギーの有効利用と自立が図られるというもの。再生可能エネルギーは消耗する化石燃料との対比で人類の目から見れば無限に生み出せるエネルギーのこと。

今後の節電社会は、再エネ、スマートメーター、国・地域・コミュニティの三層構造となったスマートグリッド、蓄電池、コジェネを活用したスマートプロジェクトにより実現されると提唱しています。そのコンセプトを紙に落とすと以下のようになるとか↓


また、リアルタイムで電力需給を把握・調整できる仕組みを活用すれば、リアルタイムの料金設定などで節電を促すことができ、ライバル会社間での競争により料金費用負担の削減も期待できる。そのためにも、アメリカ競争社会のように配電・発電の自由化を認めるべきとの考えも述べています↓


行政に求められるのはこのような自由化の制度に変えることなどの制度作りや、インフラ導入のための導入補助や安心して参入してもらうための債務保証などの支援が必要と考えているようです。
(イギリスではスマートメーターの設置が義務付けされたことや、EUではコジェネ導入目標を定めているという情報も載っていました。)

この分野について、現在は「スマート」という言葉が先行している状況で、実際何をするとどれ位の効果があるのか、それを推進するならばどのような体制でやっていくのか、などについて未だ検証段階の気がしますので、進んでいると言われる欧米の状況も含め、分かりやすい説明と理解が重要で、その上で国・地域・コミュニティがどのように主導して進めていくのか、それぞれの整合性も考えていくことになるのでしょう。

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