2014年6月13日金曜日

【書評】公害を考える ~より科学的により人間的に~ (橋本 道夫著 1970年)

本書は、「ミスター公害」と呼ばれた筆者(厚生省初代公害課長)が、政府で公害対策が実質的に行われるようになってから10年+2~3年というタイミングで書かれた、公害黎明期の書。公害の歴史やその時点までに取られた対策など当時の状況がよく分かり、現在の公害・環境問題、環境政策につながるものとして大変参考になります。

<内容>

【公害の歴史】

○昭和30年以降 「もはや戦後ではない」(経済自立5ヵ年計画)
  • 江戸川乱闘事件(パルプ工場と漁民)→①水質保全法(産業間協和・公衆衛生の向上)、②工場排水規制法、③下水道法の制定(昭和33年。経済企画庁主管※関係省庁が多すぎるため)
  • 水俣病などの原因究明(厚生省経済企画庁)(科学的証明ができないまま)会社と被害者の和解(漁業調整委員会の場で)

 ○昭和35年 「所得倍増計画」
  • 重化学コンビナートを中核とする地域開発首都圏の既成市街地に工場設置を制限する法律、工場立地調査法、工場地域特別整備法(公害の事項を含む)
  • 四日市公害コンビナート反対運動(西宮市)と開発計画取りやめばい煙等規制法(厚生・通産共管。京浜、阪神、北九州を対象に)

 ○昭和37年 
  • 隅田川への水質保全法の初適用(産業間協和条件のため施行後4年経過)
  • 厚生年金法改正による積立原資を元にした公害対策資金計画(厚生省)+公害防止事業団(通産・厚生共管)
  • 厚生省に公害審議会設置&国会両院に産業公害対策特別委員会設置

○昭和41年 
  • 自動車排気ガスの一酸化炭素規制&基地騒音対策(基地周辺整備法)実施
○昭和42年
  • 公害対策基本法(国民の健康保護が絶対的要請で、快適で清浄な生活環境保全については経済の健全な発展との調和を考慮。厚生省が主務官庁
  • 総理を議長とする公害対策会議、生活環境審議会(厚生省)、中央公害対策審議会(総理府=厚生省環境衛生局が庶務))
  • 海水油濁防止法(条約履行)、航空機騒音防止法制定
  • 旧ばい煙等規制法の廃止大気汚染防止法の制定

○昭和43年
  • 公害病認定(イタイイタイ病、水俣病)健康被害救済特別措置法公害紛争処理法、公害防止事業費用負担法案

○昭和44年
  • 企業、国、自治体が使った金は、約2000億~3000億円程度
     (国民総生産62兆6150億円の0.5~0.3%、全体の投資的経費の1.1~1.8%)。

 【公害問題の将来】 「公害対策から人間環境対策へ」
 (今後は、健康と人間環境をめぐる快適、便宜、安全、自然が求められる時代に)
  • 公害防止計画の着実な実施(企業の費用負担、国・自治体の財政措置)
  • 排出規制に加え、国土・土地利用、工場立地規制公害防止、予防施策を徹底
  • 立法分野では、公害罪、企業費用負担法
  • 国際的には、国際環境問題と自由競争原理と国際的な規制基準の制度化への対応
  • 環境科学技術開発
    (無公害自動車、窒素酸化物対策、水の三次処理、廃棄物処理技術+未知の公害要素に対する危険性の予知と対応) 

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