2014年6月28日土曜日

【書評】人口減少時代の自治体経営改革―日本のあしたのつくり方 (大庫 直樹著 2013年)

本書は、財政状況悪化が見込まれる自治体の経営を見直すための処方を金融コンサルタントの筆者が提示するもの。大阪で実践中の部分的、または提言的内容で、実際の検証を待つべきところも多そうですが、一つのアイデアとして参考になり得そうです。

<ポイント>

・人口減少で歳入が急速に縮小する一方、歳出は固定費(老朽施設、道路、橋梁、下水道などの維持・整備費)もあるので減少しにくい結果、財政が非常に苦しくなる
・地元企業の成長と地元経済の振興のため、新興市場へ上場を目指す企業の支援や地元企業を市・県外に進出することを後押しし、税収増に繋げることも重要

・資産規模で見た自治体は大企業に匹敵(東京都:34兆円 vs トヨタ:30兆円。北九州市:3.9兆円 vs 九州電力:4.1兆円)
ただし、資産(行政財産):道路、港湾、庁舎など売却・換金できないものが大半
貸借対照表(バランスシート)上の純資産:その資産-負債(地方債残高)
資金調達マネジメント:資産を与信として、借入金をどう上手に組み合わせて工面するか

・自治体が支払う金利水準は決して低いわけではない必ずしも長期固定金利(例:30年物)が一番安全ではない
償還期間や調達時期などよりよいポートフォリオ(組み合わせ)を探すことが重要
・金利は自助努力で下がる部分もある財務上の不安を払拭するようなIR(投資家向け情報提供)が有効

・公営企業債(200兆円規模。大半が政府系資金)への民間資金活用が住民負担軽減、公営企業経営の効率化、国の債務圧縮につながる

・地方独自の中小企業等への制度保証は、自治体が無利子の預託金を金融機関に預けることで成り立っているが、これを地方債残高引下げや新規事業予算に活用できないか点検すべき

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