2012年7月14日土曜日

【書評】大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清(松元崇)



大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清は、財務省職員の筆者が、戦前の財政金融政策を引っ張った高橋是清の生きた時代を通じて、国際社会、国内の社会情勢の変化に財政金融政策がどう対応してきたのか(特に軍備拡大の要求に対する高橋是清)、当時の世相なども織り交ぜて分かりやすく書かれている良書だと思います。

<特に興味深かったところ>
① 国際連盟脱退などに関わらず、関東軍による満州事変、特に上海事変がなければ中国との全面戦争、欧米との大戦は避けられたのかもしれなかったこと。
② 現地での利権、資源確保を目的とする意味で当時から経済戦争であったこと。
③ 当時の国民は国際情勢を理解していなかったことから戦争を支持したが、一方で都市と田舎、富める者と貧しい者の格差が拡大し、社会的不満が高かったことも原因となっていたことから、適切に情報を伝えることの重要性と社会不安をなくす努力の必要性を感じたこと。
④ 高橋是清の経験に基づく確固とした考え、毅然とした態度により軍部の強い予算要求にもある程度対抗できたが、その直截的な態度がやがて2.26事件での惨殺につながったこと。



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